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2016年5月25日 (水)

2012.11.2

先週の編集後記でちらりとお話をした本は「アート・ヒステリー なんでもかんでもアートな国・ニッポン」大野左紀子著(河出書房新社)でした。
 この本の白眉は美術教育についての考察。戦後続いた「自由」で「個性」を伸ばし「創造性」溢れる自己表現方法を育むの場としての学校の美術教育が、実は当時の大人たちの願望が教育に投影されていることや、現代にいたるも美術教育については混乱を来たしていたりと興味深いです。著者が言うには現在はオンリーワンが社会通念として認知され、「個性」は「生来子どもたちが持っているもの」という考えが半ば信仰というレベルまで存在し、自由や個性の意味が「理解されないまま崇められる」状況になっている。本来、子どもの「個性」は学校で社会という仕組みと学び、他者との距離や社交性、同調性を理解した上で生まれるものであり、「自由」とは、なんでも好き勝手にやって良いことではなく、規律、基準などを学校で学んだ上で自由とはなにかを学ぶものである。大雑把ですがこんなことが書いてあり、美術教育へ情緒的なイメージを持っていた私には非常に納得が行く考えでした。
 著者の大野左紀子氏の前作「アーティスト症候群」ではなぜかアートだけは変な受容のされかたをしている現在の状況をナンシー関を思わせる軽やかな筆致で楽しく読ませてくれた名著ですが、この2冊を読めば現在の美術・アートを取り巻く環境、そして取り巻かれたアート業界をも分かった気になれる傑作です。久々に読み応え充分の名著に出会えました。

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