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2015年10月25日 (日)

【感想】『書店主フィクリーのものがたり』ガブリエル・ゼヴィン(早川書房)

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『書店主フィクリーのものがたり』

ガブリエル・ゼヴィン/著 小尾芙佐/訳

早川書房 1,836円 ISBN 978-4-15-209570-1

【あらすじ】

その書店は島で唯一の、小さな書店―偏屈な店主のフィクリーは、くる日もくる日も、一人で本を売っていた。かつては愛する妻と二人で売っていた。いつまでもそうすると思っていた。しかし、彼女は事故で逝き、いまはただ一人。ある日、所蔵していたエドガー・アラン・ポーの稀覯本が盗まれる。売れば大金になるはずだった財産の本が。もう、なにもない、自分にはなにも。それでもフィクリーは本を売る。そしてその日、書店の中にぽつんと置かれていたのは―いたいけな幼児の女の子だった。彼女の名前はマヤ。自分も一人、この子も一人。フィクリーは彼女を独りで育てる決意をする。マヤを育てる手助けをしようと、島の人たちが店にやってくる。婦人たちは頻繁にマヤの様子を見に訪れるし、あまり本を読まなかった警察署長も本を紹介してくれと気にかけて来てくれる。みなが本を読み、買い、語り合う。本好きになったマヤはすくすくと成長し…人は孤島ではない。本はそれぞれのたいせつな世界。これは本が人と人とをつなげる優しい物語。

【感想】
登場する人物が「本」によって結ばれていくという話にとても感動。
展開がずるい。けどこれは泣く。

「ぼくたちはひとりぼっちではないことを知るために読むんだ」

そんなフィクリーの言葉が、この物語全体を表していてる気がする。

 主人公フィクリーの友人となる警察署長ランビアーズが初めて出会ったときに読んでいたのがJ・ディーヴァーで、付き合いが深まった時に読んでいたのが『L.A.コンフィデンシャル』というJ・エルロイの小説で、ランビアーズの選書をフィクリーが操っていたのだとニヤリとさせられる。そういった読書ネタが散りばめられ、ちょっとした本好きには小ネタが心地よい。

 生き方や考え方を導き、時に改めさせ、感情の幅を押し広げ、人との結びつき深めてくれる。そして自分の心を代弁して伝える事ができる。
そんなことは世界で一つだけ、「本」しかできないことだと、この小説は気付かせてくれるのだ。

書店で働くものとして、そして一読者として、多くの人に勧めたい小説。
※ちょっとネタバレ含む

「散文の世界では、短編小説以上に優雅なものはない」

と短篇小説が好みのフィクリーが、最後、マヤに語りかける場面。
フィクリーが最後にマヤに渡した短篇はもっとも短い「愛」という一文字の小説。

もう、これにやられた。反則だ。あざとい!けど泣く!

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